ARNE JACOBSEN

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minä perhonen
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お互いの良さを補完しあうデザイン

アルネヤコブセンの時計と
ミナ ペルホネンのテキスタイルのコラボレーションについて、
デザイナーの皆川 明さんにお話を伺いました。
ヤコブセンに勇気づけられたお話や、
デザインや思想で共通する点についても
語ってくださいました。
June. 2022. minä perhonen Interview
minä perhonen

minä perhonen〈ミナ ペルホネン〉

自然の情景や社会への眼差しから想像を広げ、丁寧につくり進めたテキスタイルデザインを特徴とする。衣服に始まり、インテリアへとデザインの幅を広げながら、日々のための長く続くものづくりを目指している。ブランド名は、フィンランド語で「minä」は「私」、「perhonen」は「ちょうちょ」を意味し、蝶の羽のように美しいデザインが無数に広がり、羽ばたいていってほしいという願いが込められている。
minä perhonen
皆川 明(みながわ・あきら)
designer / founder
1995年に「minä perhonen」の前身である「minä」を設立。ハンドドローイングを主とする手作業の図案によるテキスタイルデザインを中心に、衣服をはじめ、家具や器、店舗や宿の空間ディレクションなど、日常に寄り添うデザイン活動を行っている。
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「land puzzle」は、自分たちのアイコンに近いような織物

今回の時計に使用した生地「land puzzle」について教えてください。
皆川: コーデュロイは一般的に直線のストライプや、格子になっているシンプルな構造だけでしたので、それをなんとか複雑なブロックの組み合わせのようなことができないかと発想しました。作るのに2~3年かかったと思います。「land puzzle」を織ることができる職人さんは一人しかいないのですが、生地の技術が完成して、ようやく成し遂げられた素材なので、私たちは毎シーズンのように色を変えて製品化しています。自分たちの一つのアイコンに近いような織物になっています。
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前例のない生地の開発
大事なことは、挑戦しようという思いが持続し結果になったこと

皆川: 四角が同じ列で柄が変わるだけでなく、ブロックが入り組んで変わっているというのは前例がなく、最初はその柄をどうやって作れば成立するのか考えるところからでしたので、相当時間がかかりました。最初それはできないものとして受け取られていましたが、可能性を追求し、何年もかけて実現しました。それも、日本の技術もさることながら、挑戦しようという思いが持続したことが結果になっているので、それがすごく大事なことだったなぁと思います。
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共感し尊敬するヤコブセンのデザイン
時間をかけないと評価されないもの

皆川: ヤコブセンのSASホテルやアントチェアも最初は低い評価があったと聞いたことがあるのですが、結果的に継続的に何かをするということは、だんだん時代が追い付いてきたり、それが一般的なものになったりというふうに、時間をかけないと評価されないものがあって。僕はその話を知ったときすごく勇気づけられて、デザインっていうものは出した瞬間の評価にとらわれすぎないで、信じているなら続けていくといいんじゃないかって思えたんですよね。だから今回のヤコブセンの時計とのコラボレーションは、そういう彼のデザインの理念にも共感し尊敬もしているので、とてもやりがいがあるなと思っています。
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均一なプロダクトに
ランダムな要素を入れ有機的に

なぜ今回のコラボレーションで「land puzzle」を採用したのでしょうか。
皆川: ヤコブセンのこの時計の盤のシンプルさ、明快さ、っていうことは邪魔したくないなと思いながら、一方で生地にはいろいろなモチーフがあるので、取る場所によって1本1本柄の出方が変わるという特徴が面白いと思いました。均一にものが作られていくというプロダクトの中で、ランダムに表情が変わっていくということが要素として入ってくると、有機的な印象を持てるのと、それぞれがその人のものになるというか…。そういうところがシンプルなデザインの要素として入ってくるといいのかなと思いました。
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お互いの良さを補完し合うように

皆川: 時計の中の構図は本当に無駄がない、そして視認性がとてもはっきりしているものなので、それとその周りにある景色のバンドが少しランダムな表情を持っていたり、陰影が出てきたり、ということは、なにかお互いの良さを補完しあっているような感じがして、出来上がりを見させていただいて、とてもよいものが上がったなと思いました。
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線だけで表現している
BANKERSのデザインは美しい

お気に入りの組み合わせはありますか? 
皆川: BANKERSのアイボリーですね。グレーも、黒ではない柔らかさがあって好きだなと思いましたけど、普段は黒い革の時計を使っていたりするので、この時計ではアイボリーを使ってみると新鮮かなという気がしましたね。そしてこのBANKERSの線だけで表現しているデザインは大変美しいなと思います。
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感動的だった
憧れのデザインとの協業

ARNE JACOBSENとの出会いについて
教えてください。 
皆川: 若い頃北欧を旅した時は、SASロイヤルは泊まれるようなホテルではなかったので、外から見るだけでしたけど、でもちょっとロビーに入ってエッグチェアとかが置いてあるところに行くだけでもなんだかどきどきしました。2000年に入ってからフリッツハンセンとの出会いがありましたので、そこからは一緒にエッグチェアやスワンチェアにわたしたちのファブリックを張ったり、若い頃憧れていたデザインと自分たちが協業するということは、とても感動的だったのを覚えていますね。
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美しさを保ち使う人へ配慮した
ヤコブセンのデザイン

皆川: 特にエッグチェアなどの椅子は、機能とフォルムの美しさというのが本当に繋がっていると感じます。ある種溶け込んでいるというか、機能を全面に打ち出したように視覚的には見えない、よりアートピースのような彫刻的な印象を持ちながらも、ホテルのロビーに置いてあると隣の人との視界をちゃんと遮ってくれるようにできていたり、大きな方でもリクライニングがちゃんとできたり、そうやって使う人への配慮がありながら、最終的に美しさをきちんと保っているっていう点で、本当に稀有なデザイナーなんじゃないかなと思いますね。そのような人が50年代にいたおかげで、そこからいろいろデンマークの家具も発展していったと思いますし、同時代の人たちの特徴というのもお互いに響きあっていたんじゃないかなと思いますね。
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機能やディティールが
仕草を作るという共通点

ヤコブセンの思想やデザインで影響を受けた部分はありますか? 
皆川: デザインと機能が溶け込んでいる、という点では似ています。わたしたちもポケットや内側の仕様ですとか、気づかれないようなところに気を配ります。結果的にポケットがその人の仕草を作りますので、例えばコートは特に手を入れたときにどのようにその姿が映るか、みたいなことを考えます。機能とデザインを溶け合わせるという思想は、ヤコブセンのデザインからも強く感じていて、自分たちも同様に洋服はただ着飾るだけじゃなくて一つの道具としての機能もあるので、それがうまく人の仕草を作る、機能やディティールが仕草を作る、ということを考える点は共通しているなと思いますね。
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全体をデザインしたい、
というよりも、しないではいられない

国立銀行の時もヤコブセンはドアノブまでデザインしましたし、洋服は見た目のデザインに目がいきがちですけど、
そういう細部までこだわっている点が共通している部分なのですね。
皆川: ボタンまでオリジナルで作る、という点ではそういうドアノブや窓のヒンジみたいなところまでデザインするというのと繋がるのかもしれないですね。細部を自分たちが気にかけて初めて全体の空気感ができるので、そこは全体をデザインしたい、というよりも、しないではいられないということだったのかもしれないですね。
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